論理的とは?
論理的であるということは、正しい手順で結論を導くことです。
論理的であるとは、物事を根拠、導出、結論の三段階を通じて考えることを意味します。このプロセスは、確かな根拠に基づいて導かれた結論を持つことで、説得力のある意思決定や問題解決を可能にします。
根拠・導出・結論の三段論法
三段論法は、論理的思考の基本となる構造です。この方法では、以下の三つの要素が連携して結論を導きます。「AはBである」と「BはCである」が成り立つ場合、必ず「AはCである」という結論が導かれます。これを推移律と言います。この三段論法を理解することで、論理的な思考の流れを明確にすることができます。
- 根拠: 主張を支える証拠や理由。
- 導出: 根拠から結論を導き出す過程。
- 結論: 導出に基づく最終的な主張。

誤った論理の例
論理の過程で誤りがあると、間違った結論に至ることがあります。以下はその例です。
イルカは魚?
- 根拠: イルカにはひれがある。
- 導出: 魚にはひれがある。
- 結論: イルカは魚?
この場合、導出に問題があります。ひれを持つ動物が全て魚であるわけではないため、この結論は誤りです。「AはBである」と「AはCである」という前提から、「BはCである」という結論を導こうとしていますが、これは必ずしも成り立ちません。このような誤った論理は、ビジネスにおいても誤解を招き、適切な意思決定を妨げることがあります。今回の例では誤っていますが、たまたま「BはCである」が正しい場面も多いため、より誤解を生みます。

「論理的」とは?
ビジネスにおいては、関係者を説得できるだけの論理性が担保されていれば、「論理的」とみなされます。
ビジネスの現場では、厳密な論証が常に求められるわけではありません。重要なのは、目的に応じて、関係者を説得できるだけの論理性が担保されることです。ここではこれを「論理的」と表現することにします。具体的なビジネスシーンにおける論理的思考の活用例を見ていきます。
ビジネスにおいて「論理的」である例
例えば、あなたの経営するレストランに初めて訪れたお客さんが「何を注文すればいいですか?」と尋ねたとします。この場合、以下のように、「論理的」に思考することができます。
- このレストランではタンシチューが一番人気である(根拠)。
- 多くの顧客が満足しているメニューは、新しい顧客にも満足される可能性が高い(導出)。
- したがって、タンシチューを注文するのが良い(結論)。
このように、顧客の満足度を高めるために対応することで、ビジネス上求められるレベルで、顧客体験を向上させることができます。ここでは論理的な思考手順を踏みますが、厳密な論理性が担保されているわけではありません。実際は他に好きなものがあるかもしれませんし、もっと利用シーンに適した料理があるかもしれません。ただし、お客さんを満足させる水準のお勧めする、という目的を叶える上では、当店の人気メニューを勧めるのは、十分に「論理的」です。

論理的でないことが「論理的」である例
例えば、部下が「仕事が多すぎて大変です!」と不満を述べた場合、次のように「論理的」に対応することができます。
- まず、部下の不満を理解し、受け止めます(根拠)。
- 次に、その不満の原因を探ります。例えば、プロジェクトの締め切りが近い、他のチームメンバーが手伝えないなど(導出)。
- その後、具体的な解決策を提示します。ただし、ここで本当の論理的な理由を言うのではなく、「君に期待しているからこの仕事を任せているんだ。大変だと思うが、頑張ってくれ」と伝えることで、部下のモチベーションをケアします(結論)。
今回の仕事をなんとか部下にお願いしたいという目的である場合、真に論理的に対応するよりも、感情に訴えることで解決できる場合があります。一見論理的ではない対応ですが、目的に対する対応としては「論理的」です。このように、関係者を説得できる論理性がどこにあるのか、探るのが重要です。

帰納法と演繹法
帰納法で課題を発見し、演繹法で整理・説得をします。
論理的思考には、帰納法と演繹法という二つの主要なアプローチがあります。これらは異なる方法で情報を整理し、結論を導き出す手法です。ここでは、それぞれの概要、具体例、メリット、ビジネス上の使用場面について解説し、使い分けの重要性を説明します。
帰納法と演繹法の概要
帰納法とは、複数の事象の共通項をもとに結論を導く方法です。これはボトムアップ的な思考であり、具体的な事実や事例から抽象的な結論を導き出します。帰納法は特に現場での問題発見や課題特定に有効です。
演繹法とは、確からしい根拠や導出をもとに結論を導く方法です。これはトップダウン的な思考であり、抽象的な既知の理論や原理に基づいて具体的な結論を導きます。演繹法は特に関係者への説得や戦略立案に有効です。

帰納法のメリットと具体例
帰納法のメリットは、課題や問題の示唆を得やすいことです。現場の具体的な事実から、問題の根本原因を特定するのに役立ちます。例えば、企業で離職率が高い問題に直面し、以下のような情報が現場から取得できたとします。
- 20代のAさんが賃金に不満を感じて自社から転職した。
- 30代のBさんに内定を出したが自社より高給の他社に入社した。
- 過度な年功序列制度により若手の給与が低い。
これらの事象から、若手の賃金を改善することが高離職率の解決につながると推測することができます。

演繹法のメリットと具体例
演繹法は、理想から現実を導く場合に多く用いられます。演繹法のメリットは、厳密な論証が可能であることです。理想から現実を導く際に、抜け漏れなく論理的に整理することができます。例えば、企業の成長戦略を立案する際に演繹法を使用します。
- 自社の成長戦略には優秀な若手の獲得が不可欠である。
- 優秀な若手は企業選びにおいて給与水準を最重要視する。
- したがって、若手社員の賃金改善が自社の成長戦略上重要な課題である。
このように、一般的な原理に基づいて具体的な結論を導くことで、戦略的な意思決定を行うことができます。

帰納法と演繹法の使い分け
現場での問題発見や課題特定には帰納法が適しています。具体的な事実や観察からパターンや法則を見つけ出すことで、現実に即した課題を明らかにすることができます。一方、戦略立案や関係者への説得には演繹法が有効です。一般的な原理やルールから結論を導くことで、抜け漏れのない論理的な主張を展開することができます。
例えば、現場で若手社員の離職問題に直面した場合、まず帰納法を用いて具体的な事実から賃金不満が原因であると特定します。その後、演繹法を用いて「若手社員の賃金改善が成長戦略上重要である」と整理をし、具体的な改善策を立案・実行します。

ロジカルシンキングの手法
ロジカルシンキングの代表的な手法に、「MECE」と「So What?/Why So?」があります。
ここからは一般的に、ロジカルシンキングと呼ばれる考え方の解説をしていきます。代表的な手法として、「MECE」と「So What?/Why So?」について説明します。その次に、これらを支える代表的なフレームワークを示します。これらの手法は、関係者を説得できるだけの論理性を持つため「論理的」であり、ビジネス現場における強力な武器となります。
MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)
MECEは「漏れなく重複なく」問題を整理するための原則です。情報やデータをカテゴリー分けする際に、重複や漏れを防ぐための基本的な手法です。MECEを使用することで、問題を明確にし、全体像を把握することができます。
例えば、ターゲット市場を分析する際に、年齢、性別、地域などのカテゴリーに分けて分析することで、MECEを適用することができます。各カテゴリーが相互に排他的であり、全体として完全に網羅されていることを確認します。

So What? / Why So?
So What?とWhy So?は、原因と結果を考え抜くための手法です。これにより、問題の本質を見極め、論理的に説明することができます。
- So What?: その結果、何が言えるのか?(結果の重要性を問う)
- Why So?: なぜそのように言えるのか?(原因を探る)
例えば、自社の成長戦略において「優秀な若手の獲得が急務である」と結論づけた場合、この結論に対してSo What?とWhy So?を適用して考えます。
- So What?: 優秀な若手を獲得するためには、給与水準を見直す必要がある。
- Why So?: 優秀な若手は企業選びにおいて給与水準を最重要視する。自社は競合他社と比べて若手の給与が低いため、給与改善が必要である。
ここでは一階層への接続のみを示していますが、これを何階層も考えることで、本質的な課題に近づくことができます。

品質管理の新7つ道具である「親和図法」はMECEを実現するために非常に有効であり、「連関図法」と「系統図法」はSo What? / Why So?の手法と密接に関連しています。

代表的なフレームワーク
フレームワークは、問題を整理し、解決策を見つけ出すための枠組みを提供します。特定の目的や分析対象に応じて使い分けることが重要です。以下に、代表的なフレームワークを紹介します。
| 目的(分析対象) | 活用できるフレームワーク |
|---|---|
| 自社・競合・環境 | SWOT分析、5F、3C分析、STP分析、PEST分析、CAGE分析 |
| 戦略・ビジネスモデル | バリューチェーン、ビジネスモデルキャンバス、競争地位別戦略、I-Rフレームワーク |
| 事業 | アンゾフの成長マトリクス、PPM、プロダクトライフサイクル |
| 売上・利益 | ロジックツリー(売上方程式)、財務諸表(P/L・B/S・C/F) |
| 顧客 | クラスター分析、RFM分析、AIDMA・AISAS、カスタマージャーニーマップ |
| 製品・サービス | 4P・4C、VRIO分析、QC7つ道具、新QC7つ道具、コトラーのブランド戦略 |
| 組織・人材育成 | 7S、バランススコアカード、職務特性モデル、キャリアアンカー、SL理論 |
| 目標達成・業務改善 | SMART、ガントチャート、緊急度・重要度マトリクス、ERRC、ECRS |
| その他 | 空・雨・傘(事実・解釈・結論)、2軸4象限、5W1H |
これらのフレームワークを理解し、適切に活用することで、ビジネス戦略の立案や業務改善を効果的に行うことができます。よく知られたフレームワークを活用することで、MECEを実現しているように見え、関係者を説得するための十分な論理性を持つことができます。ただし、適切な場面で適切なフレームワークを使用しても、必ずしもすべての要素を検討できているとは限らない点に注意が必要です。
システムシンキングへの応用
システムシンキングは全体を俯瞰する思考法です。
ロジカルシンキングは個別の要素を細かく分析するのに適していますが、全体の構造や要素間の相互作用を見落とすことがあります。これに対して、システムシンキングは全体を俯瞰し、構成要素同士の相互作用に注目する思考法です。
システムシンキングとは
システムシンキングは、対象を構成する要素の相互作用に注目する思考法です。個々の要素がどのように関連し合い、全体としてどのように機能するかを理解することを目指します。ロジカルシンキングは、個々の要素を論理的に分析し、因果関係を明確にする思考法ですが、一方向の関係となるため、有機的な関係を捉えることには限界があり、これを実現したい場合、システムシンキングが有効です。
例えば、ダイエットを成功させるためには、単に食事制限や運動を行うだけではなく、それらの要素が相互にどのように影響し合うかを理解することが重要です。例えば、食事制限と運動がモチベーション向上に寄与し、これがダイエット成功につながります。モチベーションが高まることで、さらに食事制限や運動が継続しやすくなるという相互作用が生まれます。

ロジカルシンキングとシステムシンキングの併用
ロジカルシンキングとシステムシンキングを併用することで、より効果的な問題解決が可能になります。以下にそのプロセスを示します。
例えば、テレビ視聴時間の減少と他メディアの利用時間の増加が逆転する現象を分析する際に、ロジカルシンキングとシステムシンキングを併用します。
Step 1: ロジックツリーで構成要素を洗い出す
まず、ロジックツリーを用いてテレビ離れの要因を洗い出します。番組の魅力低下、規制強化、スマホの普及、コンテンツ提供者の多様化、テレビ局の収益減少などの要素が関連していることを明らかにします。

Step 2: システムシンキングで相互関係を整理する
次に、システムシンキングを用いて、これらの要素がどのように相互作用しているかを整理します。例えば、規制強化が番組の魅力低下を引き起こし、これが視聴者のテレビ離れにつながります。また、テレビ局の収益減少がさらに番組制作費の削減を招き、結果としてさらに番組の魅力が低下するというフィードバックループを形成します。

このように、ロジカルシンキングとシステムシンキングを併用することで、問題の全体像を把握し、より深い理解と効果的な解決策を導き出すことができます。
まとめ
この記事では、ビジネス現場で求められる論理的思考について解説しました。
- 論理的とは?: 論理的であるとは、物事を根拠、導出、結論の三段階を通じて考えることを意味します。これにより、確かな根拠に基づいた結論を導くことで、説得力のある意思決定や問題解決が可能になります。
- 「論理的」とは?: ビジネスにおいて、「論理的」であることは、関係者を説得できるだけの論理性を担保することです。
- 帰納法と演繹法: 帰納法と演繹法は、論理的思考の二つの主要なアプローチです。帰納法は具体的な事実や事例から一般的な結論を導き出し、問題発見や課題特定に有効です。一方、演繹法は一般的な原理や理論から具体的な結論を導き、戦略立案や関係者への説得に有効です。両者を適切に使い分けることで、より効果的な問題解決が可能になります。
- ロジカルシンキングの手法: ロジカルシンキングの代表的な手法として、「MECE」と「So What?/Why So?」があります。MECEは、情報やデータを漏れなく重複なく整理するための手法です。So What?/Why So?は、原因と結果を明確にするための手法です。また、これらを支えるフレームワークとして、SWOT分析やバリューチェーンなどを紹介しました。
- システムシンキングへの応用: システムシンキングは、全体を俯瞰し、構成要素の相互作用を理解する思考法です。ロジカルシンキングとシステムシンキングを併用することで、問題の全体像を把握し、より深い理解と効果的な解決策を導き出すことができます。
ビジネスにおける「論理的」な考え方を理解し、適切な手法を用いることで、問題解決や戦略立案がより効果的に行えるようになります。


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