業務改革の必要性と全体像
業務改革は「ロマン」と「そろばん」を実現するために行います。
なぜ業務改革を行うのか?
業務改革(BPR:Business Process Reengineering)は、企業がその業務プロセスを抜本的に見直し、効率化と革新を図る取り組みです。なぜ業務改革を行うのかというと、「ロマン」と「そろばん」を同時に実現するためです。限られたリソースを最大限に活用し、競争力を強化するために欠かせないプロセスです。
ロマンとそろばんの実現
- ロマン: 企業の夢やビジョンを達成するためには、現状の業務プロセスがその実現に適しているかを見直すことが必要です。例えば、お客様を笑顔にしたい、社会に貢献したいといった夢がある場合、それに必要な業務を可視化し、改善する必要があります。
- そろばん: 企業の収益性を確保し、持続可能な成長を目指すためにも、業務プロセスの効率化は不可欠です。無駄を省き、効率的な業務運営を行うことで、収益性を高めることができます。

目的は人件費を減らすことではない
業務改革の目的は、人件費を減らすことではなく、浮いた工数で売上を作る活動をすることです。以下の図は、業務改革により従業員3人分の工数を2人分に削減した場合の良い例と悪い例を示しています。

業務改革のプロセスの概要
業務改革には、以下の5つの主要なプロセスがあります。これらのプロセスを順を追って実施することで、効果的な業務改革が可能となります。

- 立ち上げ
- 目的設定: 業務改革の目的を明確にし、全社的なゴールを設定します。これにより、関係者全員が同じ目標に向かって動くことができます。
- チーム作り: 業務改革を推進するためのプロジェクトチームを構築します。チームメンバーには、各部門の代表者や改革をリードできる人材を選定します。
- 現状把握
- 現状調査: 現行の業務プロセスを詳細に調査し、現状の把握を行います。内部環境と外部環境の両方を調査することで、現状の問題点を明確にします。
- 現状分析: 調査結果を基に、業務プロセスの整理と構造化を行います。これにより、具体的な課題を洗い出すことができます。
- 方向性検討
- 課題特定: 現状分析から明らかになった課題を分類し、具体的な改善策を検討します。
- 施策検討: 具体的な施策を立案し、優先順位を付けて実施計画を策定します。
- 推進
- 具体計画: 施策の具体的な実行計画を立て、各タスクの責任者と期限を明確にします。
- 施策実施: 計画に基づき、施策を実行します。進捗管理と品質管理を行いながら、計画通りに進めます。
- 振り返り
- 効果測定: 施策の効果を評価し、設定した目標(ロマンとそろばん)が達成できたかを検証します。
- 継続検討: 効果測定の結果を基に、業務改革の継続的なモニタリングと改善を行います。
立ち上げ
明確な目的設定と強力なプロジェクトチームの構築をします。
目的設定
業務改革の初期段階で最も重要なのは、明確な目的を設定することです。これにより、改革の方向性が定まり、関係者全員が同じ目標に向かって動くことができます。目的設定には以下のポイントが重要です。
- ロマンとそろばんのバランス
- ロマン: 企業の夢やビジョンを達成するための目標を設定します。例えば、「お客様全員を笑顔にする」や「従業員が幸せに働ける環境を作る」といった定性的な目標です。
- そろばん: 企業の収益性を確保するための具体的な目標を設定します。例えば、「顧客満足度を10%向上させる」や「売上を20%増加させる」といった定量的な目標です。
- 顧客起点でのゴール設定
- 売上の源泉は顧客であり、顧客満足度を高めることが企業の成長に直結します。顧客視点で目標を設定することで、具体的な施策が効果的に機能します。

チーム作り
目的が設定されたら、次に業務改革を推進するためのプロジェクトチームを構築します。適切なチーム構成と役割分担が、業務改革の成功に不可欠です。
- プロジェクトチームの構成
- オーナー: プロジェクト全体の責任者。予算やスケジュールの承認を行い、重要な意思決定を下します。
- リーダー: 現場でプロジェクトを主導する役割。チームメンバーをリードし、実行計画を進めます。
- メンバー: 各現場での調査、業務分析、システム開発などを担当します。チーム内で役割を分担し、それぞれの専門知識を活かして業務改革を推進します。
- チーム作りのポイント
- 多様なスキルセット: チームメンバーには、業務プロセスの専門家、ITの専門家、経営層など、さまざまなスキルセットを持つ人材を集めます。
- コミュニケーション: チーム内外での円滑なコミュニケーションを確保するために、定期的なミーティングや情報共有の場を設けます。
- リーダーシップ: リーダーはメンバーのモチベーションを高め、プロジェクトの進捗を管理する能力が求められます。

現状把握
現行の業務プロセスを詳細に調査し、問題点を明確にします。
現状調査
現状調査では、内部環境と外部環境の双方を詳細に調べ、現状の業務プロセスに関するデータを収集します。これにより、現状の問題点や改善点を具体的に把握できます。
- 外部環境の調査
- 業界動向の分析: 業界全体の動向やトレンドを把握し、自社の位置づけを確認します。
- 競合分析: 競合他社の業務プロセスやベストプラクティスを調査し、自社との差異を分析します。
- 内部環境の調査
- インタビュー: 作業の担当者や部門責任者に直接話を聞き、現場の実態を把握します。
- サーベイ: アンケート調査を通じて、広範なデータを収集します。
- エスノグラフィー: 実際の作業現場を観察し、具体的な業務フローや課題を視覚的に確認します。

現状分析
現状分析のフェーズでは、現状調査で収集したデータを基に、現行の業務プロセスを整理し、構造化します。これにより、業務フローの全体像を明確にし、具体的な課題を洗い出します。
- 業務フローの整理
- チャートや表の活用: 業務フローを視覚的に整理するために、チャートや表を活用します。これにより、業務の流れや関連性を明確にします。
- タスクのマッピング: 各業務のタスクを細分化し、担当者や使用システムなどを整理します。これにより、どの部分に改善の余地があるかを把握できます。
- 構造化と分析
- ツリーマップの活用: 業務の構造を階層的に整理し、重要な要素を抽出します。
- 非定型業務と定型業務の分類: 業務を定型業務と非定型業務に分類し、それぞれの特性に応じた改善策を検討します。


方向性検討
課題を特定し、具体的な改善策を検討します。
課題特定
現状分析から得られたデータを基に、業務プロセスの中で改善が必要な課題を特定します。課題を明確にすることで、具体的な改善策を効果的に立案できます。大課題からブレイクダウンして、具体的な課題に落とし込みます。下記は業務削減が大課題の場合の例です。
- 課題の分類
- 業務時間の削減: 業務プロセスを見直し、無駄な時間を削減する方法を検討します。例えば、特定業務の自動化や、業務の順序最適化などです。
- 情報/ノウハウの共有: 業務に関する情報やノウハウを共有することで、効率を向上させる方法を探ります。例えば、ナレッジ共有の仕組みを導入することが挙げられます。
- ルール/制度の最適化: 業務に関連するルールや制度を見直し、最適化する方法を検討します。例えば、申請フローの簡素化や、承認プロセスの効率化です。
- 組織/体制の改善: 業務を執行する組織や体制を見直し、最適化する方法を検討します。例えば、部門間の連携強化や、権限委譲の推進です。
- 職場環境の改善: 人間関係や作業環境を改善し、働きやすい職場を作る方法を検討します。例えば、コミュニケーションツールの導入や、オフィスレイアウトの変更です。

施策検討
課題を特定したら、それに対する具体的な施策を検討し、優先順位をつけます。施策の効果とコストを評価し、実現可能な計画を立てることが重要です。
- 具体的な施策の立案(ECRSの4原則)
- 排除(Eliminate): 不要な業務やプロセスを排除します。例えば、重複する報告書の作成を廃止することなどが考えられます。
- 結合(Combine): 関連する業務やプロセスを結合し、効率化を図ります。例えば、複数の申請フローを一元化することなどが挙げられます。
- 交換(Rearrange): 既存の業務プロセスを新しい手法やツールに置き換えます。例えば、紙の申請を電子化することなどです。
- 簡素化(Simplify): 業務プロセスを簡素化し、作業負担を軽減します。例えば、手続きのステップを減らすことなどが考えられます。
- 施策の優先順位付け
- 便益の評価: 施策がもたらすインパクトや副次的なメリットを評価します。例えば、顧客満足度の向上や、業務効率の向上などです。
- コストの評価: 施策の実施にかかるコストやリスクを評価します。例えば、導入費用や、反対勢力への対処コストなどです。
- リスク管理: 施策のリスクを評価し、リスク管理の計画を立てます。例えば、施策実施の際の障害や、予期しない問題への対処方法などです。

推進
施策の具体的な計画を立て、実行し進捗と品質を管理します。
具体計画
施策を実行するためには、具体的な計画を立てる必要があります。計画には、何を、誰が、いつまでに行うのかを明確にすることが含まれます。
- タスクの詳細化
- WBS(Work Breakdown Structure): 業務改革の全体計画を細分化し、具体的なタスクとして整理します。各タスクの責任者と期限を明確にします。
- KPI(Key Performance Indicators)の設定: 施策の進捗と成果を測定するための定量的な指標を設定します。例えば、残業時間の削減や、顧客満足度の向上などが考えられます。
- リソースの配分
- リソースマネジメント: 必要な人材、時間、予算を適切に配分し、無理のない計画を立てます。
- リスクマネジメント: 予期しない問題や障害に備えて、リスク管理の計画を立てます。例えば、代替策の検討や、リスク発生時の対応手順の設定などです。

施策実施
具体計画に基づいて、施策を実施します。施策が計画通りに進行するように進捗管理を行い、タスクの品質を確保します。
- 進捗管理
- タスクの進捗確認: リーダーが定期的にタスクの進捗を確認し、遅延が発生した場合は原因を究明し、対策を講じます。
- コミュニケーション: チーム内外での円滑なコミュニケーションを確保し、情報共有を徹底します。定期的なミーティングや報告書の作成が有効です。
- 品質管理
- タスクの品質保証: 各タスクが計画通りに完遂されても、クオリティが低いと課題解決に至りません。リーダーは進捗だけでなく、品質も管理します。
- フィードバックの活用: 実施中の施策に対して、定期的にフィードバックを受け取り、必要に応じて計画を修正します。これにより、計画の柔軟性を維持しつつ、目標達成に向けた取り組みを続けます。

振り返り
施策の効果を測定し、継続的な改善策を検討します。
効果測定
施策が計画通りに進み、その効果がどれほどあったかを評価します。設定したKPIを基に、具体的な成果を測定し、分析します。
- KPIの達成度確認
- 定量的な評価: 事前に設定したKPI(Key Performance Indicators)に対する達成度を評価します。例えば、残業時間の削減や顧客満足度の向上といった具体的な数値を確認します。
- 定性的な評価: 定量的なデータに加え、定性的な成果も評価します。例えば、従業員のモチベーション向上や、業務効率化による作業のしやすさなどです。
- 予想外の効果の分析
- 副次的な効果: 施策の実施によって得られた予想外のポジティブな効果を分析します。例えば、新たなビジネスチャンスの発見や、社内コミュニケーションの改善などです。
- ネガティブな影響: 施策の実施によるネガティブな影響も確認し、次回以降の改善策に活かします。例えば、予期せぬ業務負担の増加や、リソースの偏りなどです。
継続検討
業務改革の効果が今後も持続するように、継続的なモニタリングと改善を行います。これにより、業務改革の定着とさらなる改善が可能となります。
- モニタリングの設定
- 継続的なKPIの設定: 一度の施策で終わることなく、継続的な改善を目指してKPIを設定します。これにより、業務改革の効果を持続させることができます。
- 定期的なレビュー: 定期的に業務改革の進捗と効果をレビューし、新たな課題や改善点を洗い出します。例えば、四半期ごとのレビューや年次評価などが有効です。
- 次のステップの計画
- 次回の改善策の立案: 振り返りの結果を基に、次回の業務改革の改善策を立案します。これにより、継続的な成長と業務効率化を図ります。
- 組織学習の促進: 業務改革の過程で得られたナレッジや経験を組織全体で共有し、組織学習を促進します。例えば、ナレッジ共有の仕組みを構築することなどが考えられます。

まとめ
この記事では、業務改革の重要性とその具体的なプロセスについて解説しました。
- 業務改革の必要性と全体像: 業務改革の意義と、企業の競争力強化および効率化のために必要な全体プロセスの概要を理解しました。ロマンとそろばんのバランスを取ることが成功の鍵です。
- 立ち上げ: 明確な目的設定と強力なプロジェクトチームの構築が、業務改革の成功に不可欠であることを解説しました。具体的な目標を設定し、チームメンバーの役割を明確にしました。
- 現状把握: 内部および外部環境の詳細な調査を行い、現状の業務プロセスを分析しました。現状の問題点を明確にし、改善の土台を築きました。
- 方向性検討: 現状分析から明らかになった課題を分類し、具体的な改善策を検討しました。課題の特定と施策の優先順位付けが重要です。
- 推進: 施策の具体的な実行計画を立て、計画通りに進行するための進捗管理と品質管理を行いました。詳細なタスクの設定とKPIの導入が効果的でした。
- 振り返り: 施策の効果を測定し、今後の業務改革に活かすためのフィードバックを行いました。継続的なモニタリングと改善策の立案が、持続的な成長を支えます。
以上のプロセスを通じて、業務改革を効果的に進めるための具体的なガイドラインを提供しました。これらのステップを参考にして、業務改革を成功させましょう。


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